東京で昔住んでいた家の近くには化け物みたいにでかい木蓮があった。
自慢じゃないが、いや、嘘です、今から自慢をします。
青森の実家の庭は随分と立派で、メンテナンスには庭師が二人来て二日がかりでやるような大きさだったのだけどそこにも木蓮が植っていた。
そんな実家の木蓮がその辺の花壇のチューリップに感じるようなでかさだった、あの木蓮は。
もうアーケードの屋根ですか???という勢いで個人宅の敷地上空をぶち抜いて頭上に猛烈に白い花を咲かせていて、住宅街の暗い小道で見るそれはほとんど死後の風景だった。死んだことないけど……。
そして息苦しくなりそうな程のあの香りよ!
わたしは夜に花の匂いを探しながら歩くのが本当に好きなので、暗闇であの香りに包まれるとまるで大型犬に激しくじゃれつかれた時のように「ちょww 待て待てw やばいってwww」というテンションになっていたものだった。
舞台は変わり2024年3月13日のドイツ、デュッセルドルフ。
去年の冬〜春は本当に天気がひどくて、その日もBreite Str.(ブライテ通り)を「わぁい探検だぁ(棒)」と叫びながらどんよりと歩いていたのだけど。
Bastion Str.(バスティオン通り)と交わる交差点で、わたしは、息を呑んだ。
お花がいる。この工事現場だらけの道路の近くに、お花がいる。
周りを見渡してもそれらしきものは見当たらない。ならば香りを辿るのみ!
程なくして見つかったけどわたしは仰天していた。道路をまたいだ結構な先に木蓮がいたのだった。主張が強すぎる。あと、実家の庭に植ってるものに突然異国の路上で出会ったら誰でもびっくりするでしょう。木蓮はいつでも見つけられたがってるけど、それでも心の準備ゼロで嗅覚だけでこの子を見つけられた自分を結構好きになれた。
ドイツで迎える二回目の春が来た。
今年は偶然じゃなくて、あの子目掛けて足を運ぼうと思う。
こういう風にわたしは街を愛していく。





